ふんわり放牧

個人の日記です

岡田憲治『政治学者、PTA会長になる』読んだ。

2022年上半期に読んだ文章の中で、ベストではないかと思うくらい良かった。

インターネットで話を見聞きする限りにおいて、親となったときに不合理なアクティビティを強いられるPTAと呼ばれる組織は本当に関わり合いたくないと思っていて、 誤解を恐れずに言えば、それが自分が子供を作るということに関してやる気が起きない理由の一つになるくらい。*1

一方で、コンピュータ関係の仕事をしている同業者の中においては、きっと少数派のほうになるのだろうけれど、 人間が集まって何かをするということに対して、比較的ポジティブにとらえているところがあって*2、 仕組みを知り、人が入り込んだ状態でのシステム化がうまくキマることや、人が集まるとどうしても生まれてしまう問題点をいい感じで取り除けることに、嬉しさがある。

親と教員がボランティア活動をするという理想は好きだが、現実での改善の余地すらないやり取りは勘弁してくれという感じ。 仕事ならまだしも、無報酬で自主的にやっていくのはちょっと身構えてしまう。

本書の著者はきっと私と近いスタンスで、それでも実際にPTA会長になってみた3年間をまとめたもの。

PTA会長になった当初は理想をぶち上げつつも、抵抗勢力の反対や、 実際の施策のところでは仲間と思っていた人たちがうまく動けない(慣例を崩すことに慣れていない)ことでもどかしい思いをしつつも、徐々に動きやすい状態を作っていく。 このような活動は一人ではやっぱりうまくできなくて、女房役と呼ばれる補佐的な立場の人にうまく反対してもらいながらも、 (革新の立場から見た)硬直状態を少しでも理想的な状態にしていく。 就任当時には見えていなかった一つ一つの活動の真意や、一見合理的でない取り組みに、実は助けられている人がいるということを知るというのは、私が普段やっている業務の中でもワクワクできるようなポイントと重複するため、これはいいなと思ったのだった。もちろん改善するのは大変なのだけれど。

そして軌道に乗り始めたところでやってくるコロナと休校状態というのは、話ができすぎているというか、より新たな敵が出てきたという点で、物語性がある。

著者は政治学という馴染みのない学問に関わる方だが、書きっぷりは面白い文章を読ませる人のそれで*3、 一方政治学とはなんぞや?ということも気になり始めたため、同著者の別の書籍を読んでいる。

*1:自分にとって学歴を獲得したことも都会にいることも、どちらも面倒な地域社会から逃げることが根底にあったと思うし、なぜそこに自ら入っていくのか理解できない部分はやっぱりある

*2:そうでない立場というのは例えばコンピュータ上だけで何か成果を出すことや人間が絡まない仕組みの中だけで完結することを好む立場のことを指している

*3:twitterやnoteなどもある