前回のエントリでも書いたけれど、転職活動をしていて、 私はSIを主軸に活動している本社の所属になってしまったこともあって、 カジュアル面談の場で「SIerからの脱出ですか」と言われることが何回かあった。 「ちょっとそういうんじゃないんだけれどな〜」という気持ちもあったのだが、具体的にどういうことを想定されてるのかピンとこなかったので、 一般的なSIerからの脱出というやつについて書かれてる本を読んでみることにした。
自分のポジション/スタンスは、SIerで研究開発職をしていて、その中でもソフトウェア開発に関する様々なことを研究領域として捉えているという立場。 なので、筆者のもっと楽しい職場に「脱出」しようというスタンスとは一定の距離を置いていたところもあるし、 脱出しなくても済むようなことをやっていくことが本分であるという理解をしている。
元々この書籍は同人誌の頃から追っていたこともあって、著者のスタンスや主張したいことはなんとなく知っていたのだけれど、 今回読んでみて、なるほどこれは一定の価値がある本だったなという評価をした。
いわゆる非情報系学部出身でSEになってしまって、現状の仕事に対して不満を抱えているだいたいキャリア10年未満の方に対して、 Web系エンジニアの転職を勧める自己啓発・キャリア本という感じ。 現職の開発経験自体は置いておいて、Web系企業を第二新卒で受ける際に響きそうなTipsが段階を踏んで書かれてある。 感想としては、この本自体に歯ごたえのようなものはなくて、 例えばThe Pragmatic Bookshelfで出版されているようなソフトウェア開発者に関する書籍レベルの内容を期待すると、めちゃくちゃ肩透かしを食らう。
ただ私はそれでいいとも思っていて、筆者は、
こんな批判を浴びそうなタイトルをあえて付けたのは、この本を本当に必要としている人に届けるためです。
と書いている*1。 これは本当にめちゃくちゃ重要なことだと思っていて、非常につらい開発現場にいて、海外のエンジニアの経験をベースにした書籍とか響くほうがまれだろうし、 現状に問題があることに気づかせてくれて、動機づけとか、わかりやすいアクションとかができる、わかりやすい本が効くんだろと思う。実際かなり読みやすいし。 例えばVBAの入門書とかの横においてあると(版元もC&R研究所だし)ちょっと目について、ついでに買ってみるかとなる、そういうのがいいんだろうと思う。
キャリア本という観点であれば、一つの会社でキャリア形成をしていく上での賃金周りの話題は書いてもよかったのかなと思うけれど*2、 それは「楽しくなさ」構造の源泉であり、結果だったりするので、この本の主題からすると不要かもしれないし、 そこは20代でSIerを脱出した筆者の経験ベースで語られてるから、仕方ないところかなと思う。*3
転職活動をして出会う「自分もSIerにいて」という人の想定されうるメンタルモデルはわかったし、こういうことを思われてるんだろうなというイメージがついたのはよかったですね。