ふんわり放牧

個人の日記です

『暗号化』読んだ

スティーブン・レビー『暗号化』を読んだ。 絶版になっている本なので図書館で借りて読んだ。

類書に『暗号解読』というサイモン・シンの書籍がある。これはKindle化もされているし、文庫本も入手できるので読んだことがある人は多い印象。 『暗号解読』は古い暗号の歴史から書かれていたはずで、その分長く、サイエンスライターの方が書いているということもあって、若干技術的なディテールが細かったはず。 WW2で使われたEnigmaまでが上巻で、戦後の記述が下巻という分け方になっているのだけれど、今回読んだ『暗号化』はその下巻の部分から話はスタートして、 技術的な仕組みというより、それぞれの技術がどのように生み出されたかという話と、人と組織にフォーカスを当てたものになっている。

ACMの会員になると毎年チューリング賞の人たちが表紙になっている号のCommunications of the ACMという雑誌が届く。 2015年頃、ディフィー・ヘルマン鍵共有の仕組みを発明したDiffieとHellmanが表紙の号が手元に届いたのだけれど、 Diffieの風貌は研究者というよりもアーティストという方がしっくりくる感じで、印象に残ったことを記憶している。 サイモン・シンの『暗号解読』にも、この二人のパーソナルな話は若干書かれていたと思うのだが、 今回読んだ『暗号化』にはどういうやり取りを経て発明に至ったのか、またその後の暗号研究者コミュニティのうねりのようなものが書かれていて、 ストーリーの補完に役立ったかな。

学生時代の暗号を取り扱う講義の頃には、「DESは既にオワコンになってて、AESという仕組みはオープンに作られています」という話をされてたように記憶している。 そこに至るまでには、NSAのような国の機関と、大学にいる研究者たちのやり取り、周囲のビジネスをする人たちの力学が働いていて、 もちろん多くの人がコンピューターを使うという時代の変化もあるし、 我々が気軽にセキュリティの機能を使えるのは、絶妙な舵取りの結果でこうなっているのだなという感触を得ることができると思う。