「十年一昔」とはよく言ったもので、10年も経てば価値観はずいぶん変わるものだなと、ふと思い出した出来事がある。
当時学生だった私は就職活動中で、とあるスタートアップ企業の選考を受けていた。 次は最終面接!という段階で、人事の方と電話でやり取りをしたのだが、 その中で「確実に入社することを前提に、次の選考を受けてほしい」と伝えられた。 私自身は、まだ自分が何者になるか自分でもわからないという状況があって、その会社以外も当然受けていたのだけれど、 そのように突然迫られてきたことに驚いたため*1、その場では一旦考えさせてほしいということを伝えたと記憶している。
結局、「今の自分にはそこまでの覚悟はない」とお伝えし、内定を出す前にそのような圧をかけてくるやり方や、そちらも他の候補者を選考しているにもかかわらず一方的ではないかという疑問を添えて、丁寧にお断りの連絡をした。*2
ここまでであれば、就活中の学生が当時受けていた圧力のかけられ方かなと思うが*3、興味深いのはこの先で。 その後に届いたメールは今でも読み返せるのだが、 そこには軽い謝罪のあとに、長々と言い訳が続き、さらに「聞き流していただいて構いませんが」と前置きしたうえで、説教めいた文章がしっかりと綴られていた。 スタートアップなのだから採用にはコストがかかることや、この担当者の考えている内定の説明*4や、うちだけでなく覚悟が必要なのは他社でも同じだぞという脅し?のような言葉もあった*5。
今では、自分自身が採用に関わる経験もあり、正直なことを言えば体調や余裕のなさから、候補者に不親切と感じられてしまう対応をしてしまったこともある。 だからあのときの担当者も、年次が浅くて経験が足りなかったのかもしれないし、あるいは担当者なりの信念をもって、企業に対する誠実さを私に伝えようとしてくれていたのかもしれない。 それでも、当時の私にはやはり納得できず、違和感としてずっと心に引っかかっていた。
この出来事で一番印象に残っているのは、この話を聞いた友人が私の代わりにしっかり怒ってくれたことだった。 それなりに人生経験のある年上の友人に、この会社からこういう扱いを受けて困ったんだよねという話をしたところ、 明らかに権力の勾配があるのに、たかだかこの規模の会社*6が「こんな振る舞いするなんて」としっかり代わりに怒ってくれて、 「これは怒っていいことなんだな」と自分の中で整理がついたし、会社との向き合い方のスタイルを確立する一助にはなった。
もっともこの手の話でよく聞いていたのは、候補者側がそのつもりがないのに「志望意欲は高いです」と嘘をついて、しっかり裏切るということだったし、採用側としても平気で嘘をつく人たちを相手にしなければならないという気苦労はあるのかなと、同情的な気持ちにもなる。その割りを食っているのは、バカ正直に答えてしまう自分のような人間でもあるので、やめてほしかったのだが......。
2025年の今、「オワハラ」と検索すれば、Wikipediaや厚生労働省のサイトに詳しい情報が載っている。ただただ時代は良くなっているなと感じる。